日本のジャズシーンを牽引する若き俊才のデュオ
藝大出身のジャズピアニストで映画音楽の制作でも活躍する魚返明未(おがえり・あみ)
高校在学中にプロのジャズ・ギタリストとなり近年ではシンガー・ソングライターとしても才能を発揮している井上銘(いのうえ・めい)
日本のジャズシーンを牽引する若き才能がデュオを組んだ。
実は二人は同じ1991年生まれで、旧知の間柄らしい。
30才を過ぎたばかりとはいえ、二人とも活動歴が長いので「若手」とは言いづらいのだが、溌剌とした才気に溢れているのは確かだ。
魚返氏は、あるインタビューで「聴いてくれた方の抱えている傷が少しでも和らいでくれたらいい」と語っているとおり、アルバム全体のトーンは、優しく静かな語らいのような印象。
ジャズを基調としつつも、映画やドキュメンタリーフィルムの音楽のように、ドラマティックで映像を喚起するような側面もある。
じゃあ、イージーリスニングぽいのかというと、そこまで耳あたりよく流れてはいかない。
コードの当て方は独創的で巧みだし、精緻なインプロヴィゼーションに息を呑む瞬間が多々ある。
ジム・ホールとビル・エヴァンスによるデュオの名盤「Undercurrent」から、約60年。
聴き比べてみるのも味わい深い。