ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Solo Masterpieces / Pasquale Grasso (2021)

ジャズの先人たちの名曲を、超絶技巧のソロギターで

ソロ・マスターピース / パスクァーレ・グラッソ

2015年、ウェス・モンゴメリー国際ギターコンペティションで優勝。

2016年には、パット・メセニーがギター専門誌のインタビューでグラッソの名を挙げて絶賛。

たちまち注目と期待を集める存在となったパスクァーレ・グラッソ。

本作を「パスクァーレ・グラッソのデビューアルバム」と紹介しているメディアもあるようだが、実際には違う。
オフィシャルサイトのディスコグラフィには掲載されていない。
日本独自の企画アルバムだからだ。

彼は、2019年から、ジャズ・レジェントたちの作品を独自の解釈とアレンジ、奏法で示したソロ作品をデジタル配信のEPで次々とリリースしてきた。

具体的にはチャーリー・パーカー集、バド・パウエル集、セロニアス・モンク集で、これらの作品からセレクトしてフィジカルにまとめたのが、この「ソロ・マスターピース」というわけだ。

どういう経緯でこのCDがリリースされることになったのかよくわからないが、日本のジャズ好きには「配信の音じゃあねえ...」とフィジカルを良しとする人が多いのは確か。

プロモーション上「デビューアルバム」が必要だった、という面もあるだろう。


内容はというと、ジャズ好きなら誰もが知るような著名なスタンダード曲がずらり。

何をいまさら、と言われかねないところを、名曲たちに新たな息吹を吹き込んでみせるパスクァーレ・グラッソの手際は、ただただ見事。

一つ一つの音の輪郭がくっきりしていて粒立ちが良く、フルアコならではのちょっと丸みのあるトーンが心地よい。

クラシックギターも本気で学んだという彼の奏法は独特で、言葉では上手くいえないが、二つの異なるメロディが同時に鳴ってるように聞こえるときがある。

ピアノならできるし実際演る人もいるが、ギターでこれをやるのは至難のはず。

それも、ディレイなどエフェクトを使わずに演ってみせるのだから、凄い。

超絶技巧というと、ついつい速弾きやアクロバティックな運指を想像してしまうが、それらとはまた違うのだ。

技術的なことはわからなくても、とにかく小気味よい演奏だし、日本人好みの哀愁のあるメロディは頻出するしで、これは日本でフィジカル化して正解だったと思う。

 

 


1 All the Things You Are/オール・ザ・シングス・ユー・アー
2 Over the Rainbow/虹のかなたに
3 Just One of Those Things/ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス
4 Round Midnight/ラウンド・ミッドナイト
5 Hallucinations/ハルシネーションズ
6 Sophisticated Lady/ソフィスティケイテッド・レディ
7 Tea for Two/二人でお茶を
8 Bouncing with Bud/バウンシング・ウィズ・バド
9 These Foolish Things/ディーズ・フーリッシュ・シングス
10 Epistrophy/エピストロフィ
11 Parker's Mood/パーカーズ・ムード
12 Body and Soul/ボディ・アンド・ソウル