超絶技巧の俊英がソロやトリオでエリントンをカヴァー。
パスクァーレ・プレイズ・デューク / パスクァーレ・グラッソ
2015年、ウェス・モンゴメリー国際ジャズギターコンクールで優勝。
パット・メセニーに絶賛されて一気に注目を集めたパスクァーレ・グラッソ。
2021年リリースの『Solo Masterpieces』(別記事あり)を、彼のデビューアルバムだと紹介しているメディアもあるようだが、実際には違う。
このアルバムは日本でのみフィジカルリリースが企画されたもので、パスクァーレ・グラッソのオフィシャルサイトにも記載されていない。
というわけで、本作が実質的な初のアルバムということになるのだろうが、すでに実績のある人なので「初」の意味はあまりないし、内容的にもこれまでの作品の延長線上にあると考えていい。
というのも、すでに彼の作品をチェックしてきた方はご存知のとおり、パスクァーレ・グラッソはソ、バド・パウエル集、チャーリー・パーカー集、セロニアス・モンク集をEPリリースしてきた(それらを編集したのが『Solo Masterpieces』)。
そして本作はデューク・エリントン。
ジャズの巨匠らの名曲にギターで挑む、というコンセプトは同じだ。
エリントンの作品というとビッグバンドの印象が強く、ギターではどうよ?という感じもするが、そこは技法に長けアイデアも豊かなグラッソのこと。
従来の作品が基本的にソロ演奏であったのに比べ、本作ではソロあり、ベースとのデュオあり、トリオあり、ヴォーカル入りあり、と多彩な編成を駆使しつつ、見事に独自の“デューク・エリントンの世界”を描いてみせた。
聞き覚えのあるテーマが耳に届く一方で、それほど有名ではない曲も採り上げており、知られざるエリントンの魅力に光を当ててみた、という面も強そうだ。
グラッソの音の粒立ちの鮮やかさ、フレーズの流麗さはいうまでもなく、異なるメロディが同時に響き合う音像は彼独自のもの。
これまでの彼の作品はソロ中心で、それはそれで素晴らしいがコンボでも聞いてみたく思っていたところ、ここに実現。
トリオならでの疾走感、躍動感とスリリングな展開は期待以上だ。
そしてヴォーカルには大ベテランのシーラ・ジョーダンと新進気鋭のサラマ・ジョイが参加。
各所で絶賛されたサラマ・ジョイのメジャーデビュー作で、グラッソが大活躍していたのも、ついこのあいだのことだ。
ここで改めて彼女の歌が聞けるのも嬉しい。
1 It Don't Mean a Thing
2 Blue Rose
3 Prelude to a Kiss
4 Solitude (Feat. Samara Joy)
5 Cotton Tail
6 Warm Valley
7 Mood Indigo (Feat. Sheila Jordan)
8 In a Sentimental Mood
9 Wig Wise
10 All Too Soon
11 Day Dream
12 In a Mellow Tone
13 Reflections in D
Bass – Ari Roland
Drums – Keith Balla
Guitar – Pasquale Grasso
Vocals – Samara Joy (tracks: 4), Sheila Jordan (tracks: 7)