ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Jelly Road / Blake Mills (2023)

フレットレス・バリトン・ギターのソロのほか独自の才気が随所に

Jelly Road

Jelly Road

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ジェリー・ロード / ブレイク・ミルズ

アラバマ・シェイクスなどのプロデューサーとして著名でグラミーも受賞しているが、決してポピュラーミュージックのフィールドに安住しているわけではなく、ギタリストとしては結構野心的でとんがった人である。

本作はソロとしては5作目。

これがジャズかと言うと断言はしづらいが、その異形でオルタナティブなギターの奏法、というかギターを中心とするサウンドデザインには、まことにいまどきジャズ的な無境界性、前衛性を孕んでいると思う。

ギターやピアノの生音を活かしつつ、シンセ・ベースを重ねて不穏な音像を作ったり、フレットレス・バリトン・ギターという他ではあまり聞けないギターを用いて延々と長尺のソロを聞かせたり、かと思うとオーソドックスな弾き語りがあったりと、表現の振り幅が広くて、やや散漫な印象も受けるが、その自由度の高さが彼の持ち味なのだろう。

ちなみにこのフレットレス・バリトン・ギターはサスティナー内蔵だそうで、これは弦振動を延々と持続させ得るデバイスだから、すなわちギターにはあって当たり前の音の減衰がない。

当然、シンセと区別がつきにくかったりするのだが、フレットレスゆえの音の流れはやはりギターのもので、このアルバムの大きな聞き所になっている。

なお本作はミルズとクリス・ワイズマンの共同プロデュースで、彼はシンガーソングライターとしても活躍しているらしいが、ここではピアノやアコギ、サックスなど多様な楽器を演奏している。

 

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①Suchlike Horses
②Highway Bright
③Jelly Road
④Skeleton Is Walking
⑤Unsingable
⑥Wendy Melvoin
⑦The Light Is Long
⑧Breakthrough Moon
⑨There Is No Now
⑩Press My Luck
⑪A Fez
⑫Without An Ending