ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Blues For The End Of Time / Félix Lemerle (2023)

パリ出身の正統派ギタリストのデビュー作。ジミー・コブが参加。

Blues For The End Of Time

ブルース・フォー・ジ・エンド・オブ・タイム / フェリックス・ルメール

フランス出身で、現在はニューヨークで活躍中のギタリストの、これがデビュー作。

リリースは2023年10月なのだが、じわじわと評判が広がってきたようで、JAZZ WEEKのチャートでは最高位5位まで上昇した(2024年1月15日付)。

ギターに限らず、デビュー作がこれほど上位にランクインすることは、あまりない。
たいしたものである。


彼の父親はジャズベース奏者で、幼い頃から音楽に触れており、当初はクラシック・ピアニストとしてレッスンを受けていたそうだ。

10代の頃からギターやジャズに関心を移し、ヨーロッパの様々なクラブやフェスで演奏活動を開始。

フルブライト奨学生としてニューヨークに移り、ジュリアード音楽院を卒業し、ジャズ科のアーティスト・ディプロマを取得した。

エリートコースを着実に歩んできた、といっていいようだ。

 

で、本作がデビューアルバムなわけだが、ジャズファンなら誰でも、ジミー・コブの名前に目が行くだろう。

いうまでもなく、ジャズドラマーのレジェンド中のレジェンドである。

しかし待てよ。ジミー・コブは2020年に永眠したはずだが...

実は、このアルバム、録音は2018年。
リリースまで、なぜ約5年のインターバルがあったのか不明だが、こうして世に出て、晩年のコブのプレイが聞けるのは嬉しい。

 

他のメンバー、ピアノのサミュエル・ラーナーは、初めて目にする名前だが、リーダー作もあるようだ。

もう一人のピアノ、バーサ・ホープは、名前を知ってる程度だったので調べたら、90年代に4枚のリーダー作があった。
近年、アルバムリリースはしないものの、演奏活動は続けていたのだろう。
録音時点で80歳を超えていたベテランである。

ベースのアリ・ローランドは、売れっ子の腕利きで、リーダー作もあるが、近年ではサラマ・ジョイのデビュー作でも耳にした。
ギタリスト関係では、パスクァーレ・グラッソとの共演が印象に残っている。


さて、新人ギタリストのデビュー作とはいえ、ジミー・コブが叩いているのだから、コンテンポラリーなわけはなく、タイトル通りブルージーでヴィンテージ感たっぷりの正統派ジャズギターを聞かせてくれる。

クリアな美しいトーンで、歌心あふれるフレーズを紡いでいく様は、サプライズらしいサプライスはないものの、心身に心地よい。

ジミー・コブの、彼らしく控えめではありながら、安定したスゥイング感と、鮮やかなシンバルワークはやはり光る。

アリ・ローランドのグルーブの駆動力はさすがで、弓弾きのソロもけっこう印象に残った。


決してイマドキの音ではないが、これがチャートの上位を伺うとは、こうしたヴィンテージな音を愛好する人は、まだまだ多いということだろう。

 

 


Félix Lemerle guitar
Bertha Hope piano
Samuel Lerner piano
Ari Roland bass
Jimmy Cobb drums    


1.Blues For The End Of Time
2.Dahlka
3.New World Expectations
4.Detachment
5.Rise 'n' Shine
6.Fixation
7.Dismissed
8.Attachment
9.Pacha Chéri
10.The Grind