ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Orchestras / Bill Frisell (2024)

現代ジャズギターの重鎮が2つのオーケストラと共演した大作

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オーケストラ / ビル・フリゼール

ビル・フリゼールのブルーノートからの4作目。

2022年リリースの前作『FOUR』(別記事あり) はカルテット編成だったが、本作はタイトルが示すようにオーケストラと共演した2枚組という大作。

ビル・フリゼールの実績とネームバリューがあってこその企画だと思うが、元々ゆたっりとした映画的な展開の演奏が持ち味のビルなので、オーケストラとの相性はいいはず。

トーマス・モーガン(b)、ルディ・ロイストン(d)とのトリオで、1枚目ではブリュッセル・フィルハーモニック、2枚目ではウンブリア・ジャズ・オーケストラと共演している。

それぞれのオーケストラの編成が異なるのがミソで、ブリュッセル・フィルハーモニックはなんと60人という大編成、ウンブリアは11人と小規模。

前者はベルギー、後者はイタリアのオーケストラで、録音場所も当然別々。

アレンジはマイケル・ギブス。
何歳なのかと調べたら、今年(2024年)で86歳。
老練なアレンジと形容したくなる御年だが、むしろ瑞々しく思える。

採り上げているのは、ジャズ・スタンダードからアメリカン・フォーク、ビルのオリジナルなどさまざま。

ブリュッセルとの1枚目は、とにかくオーケストレーションが素晴らしい。

多分にクラシック的で、ビルの代表曲「Throughout」が、ここまで優美に壮大になるのかと感嘆。

リズム隊がおとなしめではあるが、ここはオーケストラを活かしてのことだろう。

過去のソロやコンボでは「これってジャズかなあ?」という作品が少なくないビルではあるが、こうしてクラシック的なオケと共演すると「やはりジャズギタリストだなあ」という印象は強くなる。

一方、2枚目は11人と小さめの編成で、オケのアレンジとしてもハーモニーをつけるのが主体のよう。

従ってトリオがぐっと前に出てきて、オケを含めての重層的な躍動感が半端ない。


ぶっちゃけ、この2枚を別々にリリースしても良かったような気もするが、両オーケストラそれぞれの妙味を味わえ、というのがこのアルバムの趣旨に違いない。

ビルのギターについてほとんど書いてないが、まったくもっていつものビル・フリゼール。

オーケストラと共演であろうが、ときにおおらかで牧歌的な、ときに怪しげにブルージーな、あのトーンあのフレージングの存在感が変わらないことは、さすが。

この編成の中で、微細なハーモニクスの揺れを捉えた録音も素晴らしい。

 

 

Bill Frisell: guitar
Thomas Morgan: bass
Rudy Royston: drums
 + Brussels Philharmonic and Umbria Jazz Orchestra.


Disc One:
1. Nocturne Vulgaire (Composed by Michael Gibbs) 3:15
2. Lush Life (Composed by Billy Strayhorn) 5:08
3. Doom (Composed by Ron Carter) 4:47
4. Rag (Composed by Bill Frisell) 4:25
5. Throughout (Composed by Bill Frisell) 6:01
6. Electricity (Composed by Bill Frisell) 5:56
7. Sweet Rain (Composed by Michael Gibbs) 5:58
8. Richter 858, No.7 (Composed by Bill Frisell) 7:03
9. Beautiful Dreamer (Composed by Stephen Foster, Arranged by Bill Frisell and Michael Gibbs) 3:50

 

Disc Two:

1. Lookout for Hope (Composed by Bill Frisell) 7:11
2. Levees (Composed by Bill Frisell) 4:28
3. Strange Meeting (Composed by Bill Frisell) 6:22
4. Doom (Composed by Ron Carter) 6:32
5. Electricity (Composed by Bill Frisell) 4:08
6. Monica Jane (Composed by Bill Frisell) 6:48
7. We Shall Overcome (Traditional, Arranged by Bill Frisell) 4:47