繊細で情感豊かなECMからの3作目
ヴァカボンド / ドミニク・ミラー
この人を語るとき、必ずといっていいほど「スティングの右腕」的な形容がつくのだが、それはまあ仕方がない。
実際に、スティングの活動を30年も支え続けているのだから。
一方でソロ活動のキャリアも長く、2017年の『Silent Light』は、ECMからのリリースでいささかびっくりした記憶がある。
しかし内容はいかにもECMで、ジャズというよりはワールドミュージック的。
耽美で繊細な音の佇まいが印象に残った。
本作はECMからの3作目で、スウェーデン出身のピアニスト、ヤコブ・カールゾン、イスラエル出身のドラマー、ジヴ・ラヴィッツらとのカルテット。
しかしカルテットとしての躍動感は希薄で、演奏は極めて端正で静的。
互いが絶妙な距離感を保った緊張感のある繊細なハーモニーに耳を奪われる。
全編アコギということもあって、上品で詩情豊かで、しっとりと癒やされる。
あまりにもレーベルカラーに寄せ過ぎな感がしなくもないが、ここにいるのは当然スティングのドミニク・ミラーではない。
その表現力の幅広さこそが、彼の真骨頂なのだろう。
Dominic Miller (g)
Jacob Karlzon (p, key)
Nicolas Fiszman (b)
Ziv Ravitz (ds)
1. All Change 2:55
2. Cruel But Fair 4:16
3. Open Heart 6:48
4. Vaugines 3:42
5. Clandestin 4:11
6. Altea 3:45
7. Mi Viejo 2:06
8. Lone waltz 4:41