ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Absinthe / Dominic Miller (2018)

「印象派」をテーマにした、ECMから2作目のリーダー作

アブサン

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アブサン / ドミニク・ミラー

2017年にリリースされた前作の『Silent Light』(別記事あり)、エグベルト・ジスモンチやパット・メセニーらへオマージュを捧げた作品で、ほぼギターソロのみ。パーカッションが少し加わる程度だった。

いかにもECMな、繊細で耽美な音の響きが印象に残っている。

本作は打って変わってクインテット編成で、当然のことながらサウンドの厚みが増し、表現は多彩になった。

ジャズというよりはワールドミュージック。

タイトルの「Absinthe」とは薬草系のリキュールのことで、彼のオフィシャルサイトのアルバム紹介には、
「南フランスに住んでいる私は、印象派に魅了されている。鋭利な光と魔女のようなミストラル、そして強いアルコールと激しい二日酔いが相まって、芸術家たちの何人かは狂気へと駆り立てられたに違いない」
とある。

ちょっと何言ってんだかよくわからないが、印象派アーティストへのオマージュが本作のテーマらしく、なるほど、そう言われれば色彩感のある絵画のような印象もある。

ドミニクのリーダー作ではあるものの、あまり前に出てくる感じではなく、アンサンブル重視。

スティングのバンドの同僚でもあるマヌ・カッチェのドラムは派手さはなく抑制気味だが、多彩でキレがよく、特にシンバルワークはとても美しい。

サンティアゴ・アリアスのバンドネオンがメロディーの要で、ドミニクはアコギとエレキを持ち替えつつ、彩りを添えている。

音像はイマドキのECM然としているが、バンドネオンの響きもあって、どこかノスタルジックな印象もある。

ギターをがっつり堪能したいというリスナーには向かないが、ギターアンサンブルの佳作だと思う。

 

 

 

1 Absinthe
2 Mixed Blessing
3 Verveine
4 La Petite Reine
5 Christiania
6 Étude
7 Bicycle
8 Ombu
9 Ténèbres
10 Saint Vincent

 

Guitar – Dominic Miller
Bandoneon – Santiago Arias
Bass – Nicolas Fiszman
Drums – Manu Katché
Mike Lindup – Keyboard