ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Mondendal / Yoichi Hirai Trio + 2 (2023)

伝統的なスタンダードと先鋭的なオリジナルを交互に収めた意欲作

モンデンダル

モンデンダル

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モンデンダル / 平井庸一トリオ + 2

NHK-FM「ジャズトゥナイト」MCの大友良英氏が、番組でこのアルバムを取り上げ、高く評価していた(2024年2月3日放送分)。

大友氏自身が日本を代表するギタリストの一人なのだから、説得力がある。

番組中のコメントをいくつか要約しておきたい。

「レニー・トリスターノ、エルメート・パスコアール、アラン・ホールズワース、オーネット・コールマンから影響を受けていて、それらが彼の中に入っていて、それをギター一本で表現している稀有な存在」

「個性とかキャラとかジャンルとかが違う音楽を、ひとつの楽器で演奏できるという意味では、ギターというのは20世紀的な楽器。それを今の時代に彼なりのやり方でアプローチしているのではないか」


本作のいちばんの特徴は、「Stella By Starlight」などのオーソドックスなスタンダードと、デスメタルやハードプログレを思わせる攻撃的、先鋭的なオリジナルが交互に収められていること。

なので、最初に聞いたときは、かなり面食らったのだけれど、この多面性こそが平井の真骨頂なのだろうし、どの曲も演奏の水準が非常に高いので引き込まれる。

オリジナル曲は、キング・クリムゾンあたりを好きな人が聞いても面白く感じるのではないか。

曲構成は複雑なものが多いし、編集などポストプロダクションに凝った曲も見受けられ、そうした面でも野心作と言えるだろう。

平井のギターは、時に切っ先するどく、時にダークに淀みと変幻自在。

ベースのカイドー、ドラムの井谷とのコンビネーションは強靭かつスリリングな起伏に富んでいる。

ゲスト参加している山田光のサックスもかなり強烈で、心身に突き刺さってくるようなブロウを聞かせてくれる。

そのほか、土村和史が5度調弦ベースで参加。

サブスクでは聞けないみたいだが、税込1650円と低めの価格設定になっている。


※下記の映像はトレーラー


1. Out Of Nowhere (J.Green)
2. Escala Pentatonica (Y.Hirai)
3. Just Friends (J.Klenner)
4. Mondendal (Y.Hirai)
5. Blue Waltz (Paul Bley)
6. Folding Screen (Y.Hirai)
7. All The Things You Are (J.Kern)
8. What's New (B.Haggart)
9. Dark Matter (Y.Hirai)
10. Stella By Starlight (V.Young)


平井庸一 Yoichi Hirai(Guitar)
カイドーユタカ Yutaka Kaido(Bass)
井谷享志 Takashi Itani(Drums,Percussions)

On 2,4,6,9 山田光(Alto sax,Sopranino Sax)
On 4,6,9 土村和史(Bass Tuned in Fifth)