ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Hand in Hand / Patrick Deltenre, Ivan Paduar (2018)

ベルギーを代表するギタリストとピアニストによる叙情性豊かなデュオ

HAND IN HAND

HAND IN HAND

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ハンド・イン・ハンド / パトリック・デルテンレ、イヴァン・パデュアー

ベルギーのジャズ・ミュージシャンと言われても、まずジャンゴ・ラインハルトの名前が思い浮かぶものの、その後が続かない。

しかしながら、けっこうジャズの盛んな国らしく、首都ブリュッセルでは「Brussels Jazz Weekend」なるジャズフェスが毎年開催されている。

世界遺産の広場グランプラスに設けられた特設ステージのほか、ホテル、クラブ、カフェなど50以上の会場でライヴが行われる大規模なものらしい。

 

パトリック・デルテンレは、ベルギーのジャズシーンを代表するギタリストの一人。

1960年生まれとのことなので、60代の半ばに差し掛かるベテランだ。

母親は歌手、父親はベースプレイヤーという音楽一家に生まれ、ベルギーの名門芸術大学、リエージュ王立音楽院で学んだという。

オフィシャルのウェブサイトがないので正確なことはわからないのだが、活動当初からジャズの道を歩んでいたわけではないようで、ベルギーを代表する女性ポピュラーシンガーの一人アクセル・レッド(Axelle Red)のサポートを10年以上、努めたらしい。

また、フュージョン系のグループAFTERTOUCHのメンバーとしても活動していたそうだ。

同じくAFTERTOUCHのメンバーで、ベルギーを代表するピアニストの一人であるイヴァン・パデュアーとのデュオで、2018年に、ここに紹介する『Hand in Hand』をリリース。

双頭ではあるものの、これがパトリック・デルテンレ名義での初のアルバムのようだ。

 

聴いてみると、これがなかなか良い。

私好みの音だ。

ものすごく手っ取り早くいうと、日本人のジャズファンが「ヨーロッパ的なピアノとギターのデュオ」として真っ先に思い浮かべるであろう音と演奏、ほぼそのまんまな感じ。

70年代80年代のECMぽいと言ってもいい。

とにもかくにも、透明感のある音が素晴らしく、演奏は、叙情的で端正で知的で品がある。

パトリックはエフェクターはほとんど使ってないみたいで、実に自然で伸びやかな音を出す。

収録曲の大半が2人のうちのどちらかのオリジナルで、奇をてらったところはほとんどなく、素直で耳あたりの曲が多い。

自作の曲だから前に出るということもなく、かと言って丁々発止に渡りあう感じもない。

互いを尊重しつつ重ねられた繊細な音のレイヤーこそが、このアルバムの魅力と思える。

正直、あまり期待しないで(先入観なしで)聴いたのだが、思いのほか素晴らしかった。

ベルギーのジャズ、これからも要チェックである。

 

 

1. Menorca (Ivan Paduart)

2. Aperoses (Ivan Paduart)

3. Pigeons

4. Hand in Hand (Ivan Paduart)

5. La Grazia (Patrick Deltenre)

6. Lianes (Patrick Deltenre)

7. Draisiennes (Ivan Paduart)

8. Fringale Matinale (Ivan Paduart)

9. Mignardises (Patrick Deltenre)

10. Ravioli’s Blues (Patrick Deltenre)