ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Better Days Ahead / John Pizzaleli (2021)

ベター・デイズ・アヘッド / ジョン・ピザレリ

アコギ一本でパット・メセニーをカヴァー

1983年のデビュー以来、約30枚のリーダーアルバムを数えるジョン・ピザレリ。

私に限らず、ギターの弾き語りで歌う人、という印象を持つジャズファンがけっこう多いのではないか。

これまで、そのスタイルでリリースした、ポール・マッカトニーやフランク・シナトラ、アントニオ・カルロス・ジョビンへのトリビュート作品は、なかなか穏やかでハートウォームな仕上がりだったのが、印象に残っている。

ところが、本作は、ソロギター作品。

それもパット・メセニーのカヴァー集である。

おいおい大丈夫か、と一瞬、不安がよぎる。

パット・メセニーはもちろん超大物で名曲は多いが、そのカヴァー集なんて、あまり聞いたことがない。

おそらくはテクニック的に難曲が多いだろうし、エフェクターを駆使した音空間の構築まで含めて完成されているから、再解釈しずらいということもありそうだ。

ところがジョン・ピザレリは、ナイロンの7弦ギターで、カヴァーをやってしまった。

1曲めの「Better Days Ahead」を聞いて、なるほどである。

1989年の名盤『レター・フロム・ホーム』に収められた、軽やかで繊細なメロディを持つこの曲を、オリジナルの世界観はそのままに、より親近感のわく味わいに仕立て直している。

弦の音は、やや輪郭がぼやけていて甘めだが、それが心地よいのだ。

メセニーの作品をどう解釈したか、と考えるのもよいが、たおやかな弦の響きと、ゆったりとしたスイング感を素直に楽しむ方が、このアルバムにはふさわしいと思える。

ただ、いくらコロナ禍での制作であったとはいえ、このマスク姿のイラストは、いささか生活感がありすぎ、アルバムの中身に合っておらずがっかりする。

 

1.Better Days Ahead
2.Spring Ain't Here
3.April Wind/Phase Dance
4.September Fifteenth
5.James
6.Antonia
7.(It's Just) Talk
8.Letter From Home
9.If I Could
10.Last Train Home
11.From This Place
12.The Bat
13.Farmer's Trust