ギター、ベース、リードでカーラ・ブレイの名曲に臨んだ意欲作
ヒーリング・パワー / スティーヴ・カーデナス
スティーヴ・カーデナスはアルバム毎に、わりと編成を変えてくる人で、前作『Blue Has a Range』(2020年)では、初めてピアノを迎えたが、続く本作ではまたピアノレスに戻った。
メンバーは、ベースのベン・アリソンと、サックス&クラリネットのテッド・ナッシュで、ドラムもいない。
ふたりともカーデナスとの付き合いは長く、安心感のある顔ぶれだが、ギター、ベース、サックスという編成はやや珍しく、おまけに取り上げているのはカーラ・ブレイの曲だという。
ピアノなしで全曲カーラ・ブレイというのもなかなかの挑戦だが、そのぶんやりがいはあるだろうし、カーラが音楽監督を務めていたチャーリー・ヘイデンのリベレイション・ミュージック・オーケストラや、カーラのパートナーであるスティーヴ・スワロウのバンドでの演奏経験もあるカーデナスゆえ、挑む資格も技量も十分だ。
有名な曲とあまり知られてない曲が半々くらい。
全体としてミディアムからミディアムスローのゆったりした曲調が多く、ブレイの知的で優美で情緒的な側面を活かしたようなアレンジと演奏で、『Healing Power』というタイトルからもそうした意図が伺える。
カーデナスはピッキングもフレージングももちろん上手いのだが、全体の中でのギターの配置が上手く、その間を縫うように響く、ナッシュのソプラノ、クラリネットがことのほか印象的。
本ブログはギター作品がテーマなので、カーデナスの作品として取り上げたが、そもそもは連名作品であり、駆動力のあるベンのベースを含め、3人の均等なスクラムの具合は聞けば当然のようにわかる。
Steve Cardenas – Guitar
Ben Allison – Bass
Ted Nash – Woodwinds
Ted Nash (tenor & soprano saxophones, clarinet)
1.Ida Lupino 06:15
2.Donkey 05:11
3.And Now, The Queen 03:13
4.Ictus 03:31
5.Lawns 06:21
6.Ad Infinitum 06:18
7.Olhos de Gato 04:46
8.King Korn 03:29
9.Healing Power 05:26