“二人の巨匠”への熱のこもったトリビュート作品
チャーリー&ポール / スティーヴ・カーデナス
スティーヴ・カーデナスのリーダー作は、トリオ、もしくはトリオ+ワンホーンというのが、お決まりのパターンになっていて、前作の『Melody in a Dream』ではトランペットだったが、本作ではアルトが加わっている。
このタイトルは何かというと、チャーリー・ヘイデンとポール・モチアンを指していて、この二人の曲がずらりと並ぶ。
カーデナスはもちろん他のメンバーも、チャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンとの共演経験があるそうだ。
言うまでもなく、二人ともすでに他界しているので、トリビュートの意味合いも強いのだろう。
ただ、この二人、曲の傾向は結構違う。
ヘイデンはメロディのはっきりした曲を好む傾向にあり、モチアンはややアバンギャルドな傾向がある。(もちろん全ての曲がそうではないが)
カーデナスは、エレキとアコギを持ち替えながら、巧みなトーンコントロールで、曲ごとに彩り豊かな演奏を聞かせる。饒舌だが決してクドくならず品がよいのが、この人の持ち味だ。
そして、ヘイデン、モチアンへのトリビュートだからして、当然ドラムとベースの出番は多い。
両人にしてみれば「おいおい、ガチで比べるのは勘弁してくれよ」と苦笑するだろうが、なかなかどうして巨匠たちのひとクセある奏法を引用しつつ、イマドキ感のある明度の高い演奏を聞かせている。
付け足しのようで何だが、アルトもいい塩梅に彩りと熱気を加えている。テーマがギターだけだったら、いささか起伏の薄いアルバムになっていただろう。
まったくもってスティーヴ・カーデナスの作品には、ハズレがない。
なお、この作品はリリース時点ではアナログレコードのみで9曲収録だったが、デジタル化されてからは11曲に増えている。
1 Kalypso
2 Tangram
3 Asia
4 La Pasionaria
5 In The Moment
6 Prairie Avenue Cowboy
7 Riff Raff
8 Pocket Full Of Cherry
9 For Turiya
10 For The Love Of Sarah
11 There In A Dream
Steve Cardenas – Guitar
Loren Stillman – Alto Saxophone
Thomas Morgan – Bass
Matt Wilson – Drums