ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Dreams Do Come True / When George Benson (2024)

ワーナー復帰第一弾は、80年代に録音していた未発表スタンダード曲集

ドリームス・ドゥ・カム・トゥルー / ジョージ・ベンソン

ベンソンは、1976年から1993年にかけてのワーナー在籍期間に、かの名作『ブリージン』をはじめ12枚のスタジオ・アルバムを発表している。

その間、ヒットを連発し、グラミーを複数回受賞。

ジャズ・ギタリストという枠を超えて、米国屈指のエンターテイナーとしの地位を確かなものにした。

97年以降はワーナーを離れ、GRPやコンコードから作品をリリースしていたが、このたびワーナーに復帰。

その第一弾が本作である。

正式なタイトルは「Dreams Do Come True: When George Benson Meets Robert Farnon (feat.The Robert Farnon Orchestra)」

ロバート・ファーノンはカナダ生まれの作編曲家・指揮者。
私は知らなかったが映画音楽やTVドラマの音楽、イージー・リスニング方面ではそれなりに実績のある人らしい。

そのロバート・ファーノンと彼が率いるオーケストラとコラボし、ベンソンが華麗でゴージャスな演奏をバックに、アメリカン・スタンダードやポップ・クラシックを歌うというのが、このアルバムの趣旨。

基本的にヴォーカル主体のアルバムではあるのだが、なにせジョージ・ベンソンの未発表音源なので、ここに取り上げないわけにはいかない。

量的には控えめながらギターソロも聞かせてくれていて、お決まりのスキャットユニゾンもある。

 

しかしなぜ、今頃のリリースになったのか。

本作の録音は1989年。

翌年の1990年には「Big Boss Band」という、同じような趣旨のアルバムをリリースしている。

どこが同じかというと、カウント・ベイシー・オーケストラと共演して、ベンソンが「On Green Dolphin Street」などのスタンダードを歌っているのだ。

なんで、こんな同じようなアルバムを立て続けにレコーディングしたのか。

ついでにいうと、この「Big Boss Band」に入ってる「Portrait Of Jennie」は、ロバート・ファーノンとの共演なのだ。
なにがどうなってんのか、よくわからない。

 

勝手な推測だが、この頃のベンソンはスタンダードづいていて、まずはロバート・ファーノンと録音。

その後ベイシーとの共演が持ち上がり、知名度や話題性からこちらを優先。

ファーノンとの共演でできの良いのを加えてリリースした。

残りのファーノンとの共演曲は、後追いでのリリースのタイミングをはかるうち、ワーナーを離れてしまい、お蔵入りになった...と。


「Dreams Do Come True」というタイトルは、おそらく今回命名したのだろうから、ベンソンはいつかこの作品を送り出すことを夢に見ていたのだろう。

89年に録音されたスタンダード集だからして、イマドキ感はなく、ビートルズの「Yesterday」やレオン・ラッセルの「A Song For You」など選曲もベタ。

しかし、オーケストラをバックにしたベンソンの歌は甘美で艶があり、色気もじゅうぶん。
スタンダード集として時代を超えた普遍的な輝きを放っている。

約35年の時を経て、こうして世に出たことを喜びたい。

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1. At Last/アット・ラスト(Mack Gordon/Harry Warren))
2. A Song For You/ア・ソング・フォー・ユー(Mack Gordon/Harry Warren)
3. Pretend You’re Happy/プリテンド(Cliff Parman/Lew Douglas/Dan Belloc/Frank Lavere)
4. A Long Time Ago/ア・ロング・タイム・アゴー(Robert Farnon)
5. Love Is Blue/恋はみずいろ (Andre Popp/Pierre Cour/Bryan Blackburn)
6. My Romance/マイ・ロマンス(Richard Rodgers/Lorenz Hart)
7. Autumn Leaves/枯葉(Joseph Kosma/Johnny Mercer/Jacques Prévert)
8. Can’t We Be Friends/お友達になれない?(Paul James/Kay Swift/Janey Clewer)
9. My Prayer/マイ・プレイヤー(Georges Boulanger/James Kennedy)
10. Yesterday/イエスタデイ(John Lennon/Paul McCartney)
11. One Goodbye/ワン・グッドバイ(Maurice Brooks)