ジャズギターを聴く

JAZZ GUITAR ALBUM SELECTION

Twentyfour / Al Di Meola (2024)

70代に入ったディ・メオラの集大成的アルバム

Twentyfour

Twentyfour

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トゥエンティーフォー / アル・ディ・メオラ

アル・ディ・メオラは1954年生まれ。
パット・メセニーとは同い年で、ジョン・スコフィールド、ビル・フリゼールより少し年下。

70代という年齢、そのキャリアや後進に与えた影響からして、彼らを「巨匠」と呼んで良いと思う。

とはいえ、昨年アルバムをリリースしたラルフ・タウナーは1940年生まれの80代だし、近年新作はないが、ジョン・マクラフリン、ジョージ・ベンソンも80代。

長きにわたってキャリアを重ねるジャズギタリストが多いことは、ファンにとってはもちろん嬉しい。

 

レジェンドたちの功績は多々あれど、アル・ディ・メオラに関して言えば、いうまでもなく超絶技巧のフラメンコギターをジャズ、フュージョンと融合させたことだ。

リターン・トゥ・フォーエヴァーへの参加が1974年で、初のソロアルバム『Land of the Midnight Sun(白夜の大地)』のリリースが76年。

以降、ジャズ・フュージョン・ギターの第一線を走り続けてきた。

 
本作は2020年の『Across The Universe』(別記事あり)に続き4年ぶりのアルバム。

前作はタイトルからわかるとおりビートルズのカヴァー集という企画性の強いものだったが、本作は全曲オリジナル。

CD2枚組で全15曲という大作だ。

この記事のタイトルに「集大成的アルバム」と書いたが、もちろんベストセレクションとかキャリアを総括したという意味ではなく、ディ・メオラが自身の多彩な技とアイデアを網羅的に示したということだ。

昨年、心臓梗塞で倒れ、ファンをヒヤッとさせたが、そのカムバックを示す大作でもある。


当初はアコギメインでの内省的な作品を意図していたらしいが、結果的にはエレキも弾き、オーケストラも加えてバリエーション豊か。

フラメンコ調の曲で聞かせる、疾走感あふれる超高速フレーズは、やはり息を呑む切れ味。

彼はあまりスケールアウトしない人なのだが、それでいてこのフレーズの多彩さには、今更ながら驚くばかり。

一方で、娘がおやすみを言いにレコーディング・スタジオにきたことにインスパイアされたという可憐なメロディの曲や(下記動画)、スペインのイヴァン・ロペスのヴォーカルをフィーチャーした麗しいバラードもありと、曲想は広い。

かつては、あまりにテクニカルなことから「心がこもってない」「ソウルが感じられない」などとたびたび揶揄された彼だが、本作を聞いてそう感じる人はほとんどいないだろう。

オーディオ面での解像度も素晴らしく、音のひとつひとつの輪郭が鮮やかで生命力がある。

総じて満足度の高い作品である。

 

 


<Disc 1>
1.Fandango
2.Tears of Hope
3.Esmeralda
4.Capriccio Suite
5.Ava's Dance in the Moonlight
6.Immeasurable Part1

<Disc 2>
1.Immeasurable Part2
2.Eden
3.Close Your Eyes
4.Immeasurable Part3
5.Paradox of Puppets
6.For Only You
7.Genetik
8.Testament 24
9.Precocious

 

Al Di Meola (guitars, bass, keyboards and percussion)
Derek Wieland (piano, keyboards)
Rodrigo G. Pahlen (harmonica)
Hernan Romero (guitar, piano)
Ivan Lopez (vocals)
Pere Munuera, Tommy Brechtlein (drums)
Amit Kavthekar (tabla)
Gisella Giufra (cajon)
Gumbi Ortiz (congas)