ショパンプロジェクトと同じ編成でブラームスに挑んだ意欲作
ブラームス・プロジェクト / カート・ローゼンウィンケル & ジャン=ポール・ブロードベック
カート・ローゼンウィンケルは、この3月に、オルケストラ・ジャズ・ヂ・マトシニョス(OJM)と共演したライヴ作『Our Secret World - Live At Cara』(別記事あり)をリリースしたばかり。
ただ、このライヴの録音は2021年だし、2010年に同じくOJMと共演した『Our Secret World』の続編のようなもの。
本年初の、まっさらな新作となるのが、ここに紹介する『The Brahms Project』である。
ど直球なタイトルに示されているとおり、ブラームスの作品をジャズアレンジで巧みに調理し、カルテットでの演奏に仕上げている。
彼がクラシックの作品をアルバムのテーマに採り上げるのは2作目で、前作は2022年の『The Chopin Project』だ(別記事あり)。
ショパンに挑んだことに手応えを感じつつ、他の作曲家への挑戦心が湧き上がってきたのだろうか。
スイスのジャズ・ピアニスト、ジャン=ポール・ブロードベックと双頭なのはショパンのときと同じで、ベースのルーカス・トラクセル、ドラムのホルヘ・ロッシという顔ぶれも変わらない。ついでにジャケットデザインも、ほぼ同じだ。
採り上げているのは、超有名な#1「Hungarian Dance No.1」(ハンガリー舞曲第1番)、#8「Hungarian Dance No.5」(ハンガリー舞曲第5番)、#7「Symphony No.3 – III. Poco allegretto」(交響曲第3番 第3楽章 ポコ・アレグレット)など、
アレンジはすべてジャン=ポール・ブロードベックだ。
カート・ローゼンウィンケルがやるのだからして、「有名なクラシックの曲を4ビートでやってみました」的な安直なジャズアレンジとは当然かけ離れていて、スリリングで緊張感に満ちたアレンジと演奏は、コンテンポラリージャズそのもの。
元が構造のかっちりしたクラシックだからだろうか、カートのドリーミーで自由度の高い展開がいっそう耳をひく。
ブラームスも今でこそクラシックだが、活躍していた当時は民族音楽を積極的に取り入れるなど尖った存在であったはずで、だからこそカートらがインスパイアされる要素が多分にあったのだろう。
ショパン、ブラームスときて、次作は異なるクラシックの作曲家に挑戦して欲しい気もするが、一方で、このプロジェクトとは異なるメンツでの作品にも期待したいところだ。
01. Hungarian Dance No.1
02. Intermezzo, Op.117, No.2
03. Intermezzo, Op.118, No.2
04. Rhapsody, Op.79, No.1
05. Wiegenlied
06. Intermezzo, Op.116, No.6
07. Symphony No.3 - III. Poco Allegretto
08. Hungarian Dance No.5
09. Ballade, Op.10, No.4
10. Symphony No.4 - III, Allegro Giocoso
*Bonus Track:
11. Intermezzo, Op.118, No.2 (Radio Version)
Kurt Rosenwinkel – Guitar
Jean-Paul Brodbeck – Piano
Lukas Traxel – Acoustic Bass
Jorge Rossy – Drums
