リオ・ボニート / ファビアーノ・ド・ナシメント
現代ブラジルギターの最高峰による美的でスリリングな音世界
これをジャズ・ギターと言っていいのか、いまひとつ自信はないが、ジャズ的な語法を多分に活かし昇華した作品であることは確かだ。
ファビアーノ・ド・ナシメントは現代のブラジル音楽において、人気・実力ともに筆頭のギタリスト。
その華麗で雄弁なアコギのテクニックもさることながら、特筆すべきは世界中のあらゆる先鋭的な音楽に対する感度の高さだ。
ジャズはもちろん、R&Bやヒップホップ、現代音楽やミニマル・ミュージックの最先端のムーブメントと共振しつつ、自らのルーツであるブラジル音楽をアップデイトし続けている。
本作には、ブラジル音楽シーンにおける最重要人物の一人であるエルメート・パスコアールのバンドのベーシスト、イチベレ・ズヴァルギが加わり、旧作に比べさらに多彩に、かつ深みを増した印象だ。
ボサ・ノヴァ等のブラジル音楽、ジャズ、クラッシックが程よくブレンドされた音像は、繊細で品があり、叙情に富む。
ただ決して情緒に流れるばかりではなく、どこかスリリングでハッとさせられる瞬間が随所にあり、そこが本作の魅力だと思う。
2022年にリリースされたジャズギター・アルバムの中では、ジュリアン・レイジやビル・フリゼールらと並ぶ、屈指の作品だと言える。
1. Starfish
2. Emotivo
3. Coletivo Universal
4. Strings for My Guitar
5. Luz das águas
6. Theme In C
7. Just Piano
8. Strings for My Guitar“ Full Band”
9. Retratos
10. Kaleidoscope