ディストーションの効いたストラトの音ながら、紛れもなくいまどきのジャズ
サード / ニア・フェルダー
なんだか忘れかけていたころに、ひょいと新譜を出してくるニア・フェルダー。
1982年、ニューヨークの生まれで、バークリーを卒業し、エスペランザ・スポルディング、マーク・ジュリアナ、ジャック・ディジョネット、ミシェル・ンデゲオチェロ、ブラッド・メルドーといった大物らとの共演を経て、順調すぎるほどのキャリアを重ねてきた。
ではあるのだが、初のリーダー作『Golden Age』が2014年、続く『II』が2020年、そしてようやく『Ⅲ』と、リーダー作は10年間で3枚しかないという寡作ぶり。
前作『II』(別記事あり)をこのブログで紹介したとき「まだまだ引き出しの多そうな人なので、次作はもう少し短いインターバルでのリリースを望みたい」と書いたのだが、結局4年も待ってしまったのだ。
しかし待った甲斐があって出来はいい。
もともとがアイデアが豊富で、キーボードなども操り、ポスト・プロダクションにも凝る人ではあるのだが、本作もそうしたこだわりをちりばめつつ、ちょっとディストーションのかかった陰りのある音で、切っ先するどく雄弁なギターを存分に聞かせてくれる。
基本はドラムとベースとのトリオ編成だが、1曲のみピアノ入りで、ニア・フェルダーは、シタール、バンジョー、キーボードなども操り、楽曲ごとに印象は多彩。
もともとロックテイストが鮮明な人なので、8ビートが中心だが、シンプルなそれではなく、アクセントの入れ方とかリズム隊との絡み方は独特で、そのあたりはやはりジャズだ。
なかでも印象的なのは5拍子の「Era’s End」で、疾走感あふれるソロに耳を奪われる。
いやしかし、今度こそは、あまりインターバルなく次作をリリースして欲しいものだ。
1.Mallets
2.Cold Heaven
3.Longest Star
4.Era's End
5.Dream
6.Sea of Miracles
7.Revival
Guitar, Mandolin, Banjo, Electric Sitar, Key Bass, Fender Rhodes, Theremin, Synthesizers, MPC – Nir Felder
Bass – Matt Penman, Orlando Le Fleming (Track: 1)
Drums – Jimmy MacBride
Piano – Kevin Hays (Track: 1)
Vocals – May Cheung (Track: 3)
